父親の言葉の深さ

私は大学の4年の夏頃にまだ就職活動をしていました。自分が何をしたいのかも分からず、なんとなく面白そうな会社をいくつか受けましたが、何一つ受かるところはありませんでした。今から思えば、あのときの自分はなんの目的も持たず、やる気もなく、そんな人を採用するはずがありません。
そんな風に就職活動で悩んでいると、父がこう言ってくれました。

30歳までに定職に就けるようにしたらいいんじゃない?

父はふとしたときに私に助言をしてくれ、何度も救われています。
今回の助言は、私は会社とはこれから一生を共にするパートナーのような大きさで捉えていたことで気を重くしていたことに気づかされ、とても楽な気持ちになりました。
それから自信を取り戻し、面接の勉強を繰り返し、その結果自分をしっかりアピールできるようになり、なんとか今の会社に就職できました。
それから年を重ね現在28歳となり、今年の正月は父と昨今の経済状況について、この不況で今後はもっと厳しくなるだろうな、なんて話をしていました。そんな中、ひそかに考えていた転職について話を切り出しました。

そろそろ転職しようかと考えてる。もっと自分のやりたいことをやりたい。

自分は大きな会社よりも小さな会社の方が好きなので、そうすると30歳までに定職*1に就くというのは満たせそうにないと考えていました。30年間同じ会社に勤めた父にしてみれば身勝手な行動と思われるかなと思っていました。しかし、父は、

自分のやりたいことをやった方がいい。今はそういう時代だ。

と言ったのです。
とても意外でした。なにを思ってそう言ったのかは分かりません。中卒で40年間まじめに働いてきた父がそう言うのでなおさらでした。父は家族を養うため自分の好きなことを諦めてお金をかせぐことを優先していたと思います。その中で人生は自分の生きたいように生きるのが一番だと悟ったのかもしれません。
そこで以前の30歳までにという言葉について考えてみると、定職に就けと言っているのではなく、単に私の気持ちを楽にさせるために言ったのかもしれません。そして今回もそうかもしれません。自分の好きな道を進めばいいさと。もしそうであれば、これまで父親から愛情を受けているとそれほど感じたことがなかったのですが、その言葉の裏側を読み取ると涙が出そうでした。
確かに単に思った言葉を発しただけかもしれません。
いずれにせよ私にとってはとても大切な言葉です。私は私の輝ける道を進みたいと思います。

*1:大きな会社で安定しているという意味で